第24回 NAU 21世紀美術連立展:出品メンバー紹介および所属美術団体
【I. キュレーター宣言と組織哲学 (Curatorial Statement & Philosophy)】
NAUの歴史と理念:「原子化された個体」から「リゾーム状の連立」生態系へ
NAU History & Philosophy: From Atomized Individuals to Rhizomatic Unity
21世紀に入り、芸術はもはや孤立した象牙の塔ではなく、水平に連結した有機的なネットワークとなりました。NAU (New Art Unite / 21世紀美術連立展) は創立以来、日本戦後の画壇において長く硬直化していた「タテ社会(Vertical Society)」の構造に応答しようと試みてきました。伝統的な公募展システムは、往々にして師弟制度や厳格な審査階級に囚われており、現代アートにおける最も貴重な特質である「自由意志」と「異質な対話」を制限してしまっています。
NAUが提唱する 「連立 (Unite / Renritsu)」 という概念は、ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze)の「リゾーム(Rhizome)」理論に呼応する急進的な生態実験です。それは、アーティストの「存在論的な独立性(Ontological Independence)」を保持したまま、領域、国境、世代を超えた「水平的な連結」を行うことを主張します。ここでは、前衛書道の精神性、フォービズム絵画の物質性、そしてデジタル映像の仮想性が、互いに排斥し合う流派ではなく、21世紀の視覚的景観を共に構成する有機的なコンポーネントとなります。
第24回の展覧会は、NAUが「日本国内のグループ展」から 「汎アジアの芸術的結節点 (Pan-Asian Art Nexus)」 へと転換する象徴となります。台湾、韓国の芸術団体との構造的な同盟を通じて、NAUは東アジアにおける現代アートの境界を再定義し、芸術が「連立」の中で差異を保ちながら、「対話」の中で新たな意義を生成できることを証明します。

【WEB版】第24回 NAU 21世紀美術連立展:アーティスト相関図(インタラクティブ)
【II. 場所の精神 (Venue Significance)】
国立新美術館:壁なき殿堂と対話の器
The National Art Center, Tokyo: The Wall-less Cathedral of Dialogue
今回の展覧会が、日本芸術の最高峰である殿堂——国立新美術館 (The National Art Center, Tokyo) で開催されることには、極めて高い象徴的意義があります。
建築の巨匠、黒川紀章 (Kisho Kurokawa) によって設計されたこの美術館は、それ自体が「共生 (Symbiosis)」哲学の具現化です。永久的な所蔵品(Permanent Collection)を持たないということは、歴史の固定化を拒絶し、永遠に「現在(いま)」のアート表現に対して開かれていることを意味します。その巨大な波状のガラスカーテンウォールと柱のない展示空間は、NAUの大型インスタレーションや空間書道にとって最も完璧な舞台を提供します。ここで展示することは、参加アーティストが厳格な学術的審査を通過し、日本現代美術史の正規の視野に入ったことを意味します。これは単なる展示空間ではなく、個人の創作を「公共の記憶」へと転換させる神聖な場なのです。
出品アーティストの「芸術団体/展示画廊/学術圏」分析と連携
一、方法論と閲覧ガイド
1) 三層構造のネットワーク分析フレームワーク
- 団体層(G):NAU(21世紀美術連立展)を中心に、Salon Blanc(日仏現代国際美術展)、太平洋美術会、墨人会、AJAC、日本美術家連盟、Asia Artists Network(アジア・アーティスト・ネットワーク)、AU(アーティスト・ユニオン)、現展(日本現代美術家協会) などへと外延します。
- 画廊層(A):東京銀座—京橋の画廊帯を核心的ノード(Gallery Hinoki、K’s Gallery、Shirota Gallery、Artcomplex Center of Tokyo(ACT)、Gallery Natsuka、GALLERY AND LINKS 81 など)とし、横浜、名古屋、京都、大阪、さらに海外(パリ、ニューヨーク、ミラノなど)の提携スペースへと拡張します。
- 学術層(S):東京藝術大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学、女子美術大学、京都造形/京都芸術大学、愛知県立芸術大学、大阪芸術大学、弘益大学(韓)、パリ・グランド・ショミエール芸術アカデミー(仏) などを中心に、師承の脈絡(師弟制度、研究室システム)と学校間の相互作用(客員、提携、交流展)を連結します。
2) ノードとエッジ(Nodes & Edges)
- ノード(Nodes):アーティスト、団体(協会/グループ展組織)、画廊(美術館含む)、学術機関。
- エッジ(Edges):
- 会員/メンバー/受賞(アーティスト ↔ 団体)
- 個展/グループ展協力(アーティスト ↔ 画廊/美術館)
- 学位/師承/研究/講師(アーティスト ↔ 学術機関)
- キュレーション/審査(アーティスト/団体 ↔ 画廊/美術館)
- 多国間交流(団体 ↔ 海外画廊/美術館/学校)
3) ネットワークの読み方
- 同心円:NAUを第一圏とし、外側に向かってNAUと高頻度で相互作用する画廊(Hinoki、K’sなど)、さらに外圏にNAU出品作家と重なる他の団体(Salon Blanc、太平洋美術会、墨人会、現展など)や海外ノード(パリ、ニューヨーク、ミラノ)が配置されます。
- ブリッジ・ノード:複数の圏層を接続できるアーティスト(例:NAU会員でありながら他の大規模団体や海外プラットフォームで活躍する者)、あるいは学術と展示の両端で強い結びつきを持つキュレーター型アーティスト。
- メディア・コミュニティ:書/墨、ファイバーアート、版画、油彩/抽象、陶芸/彫刻、写真などのコミュニティが、画廊と学術の交差点で「メディア・ネットワーク」を形成しています。

二、中核ノード総覧
(G) 団体とグループ展プラットフォーム
- NAU(21世紀美術連立展):本分析の中心。多数のアーティストがNAU会員または推薦入選者として参加。
- Salon Blanc(日仏現代国際美術展):フランスの機関やフランス大使館賞と関連。リスト中の青木洲子、久保木妃呂子、文珠川清、吉原緑香などがこのプラットフォームと接点を持つ。
- 太平洋美術会:日本最古の西洋画団体の源流の一つ。久保木妃呂子が運営委員/会員/東京支部メンバーとして在籍。
- 墨人会:戦後日本の現代書の重要な源流。萌翠、渡邊佐和子がこの脈絡と密接に関わる。
- 現展(日本現代美術家協会):王穆提が台湾連絡所所長を務める。呉采恩が2025年第81回現展に入選。
- Asia Artists Network(AAN):山田陽子が社長を務め、アジア圏の協力を横断的に連結。
- AU(アーティスト・ユニオン):具体美術創設メンバー・嶋本昭三の企画と交差。湯沢茂好、桑山真麻弓などが関与。
- AJAC、日本美術家連盟:Sasaki Tsunamasa が AJAC 会員。多くのアーティストが日本美術家連盟とも交流を持つ。
(A) 画廊と美術館
- Gallery Hinoki(ギャラリー檜/京橋):NAUアーティストが高頻度で出現する東京の中核画廊ノード。
- K’s Gallery(銀座):多くのアーティストが毎年個展を開催しており、NAUコミュニティと重複する。
- Shirota Gallery(銀座):上杉道子、浜田夏子などが活躍。
- Artcomplex Center of Tokyo(ACT):woga、渡邊健吾、YU-KI などがここで展示または受賞している。
- Gallery Natsuka/GALLERY AND LINKS 81/Gallery KINGYO/小杉画廊:NAUと首都圏画廊帯の典型的な協力ノード。
- 国立新美術館(六本木):NAU展のメイン会場。多くのアーティストがここで他の大型公募展や交流展にも参加している。
- 海外ノード:パリ Galerie Métanoïa、Espace Sorbonne 4;ニューヨーク The Nippon Gallery、The Nippon Club;ミラノ M.A.D.S. ART GALLERY;ソウルの複数の美術館や文化院など。
(S) 学術機関
- 東京藝術大学:田畑理恵(講師歴/研究)、田嶋初/田島弘行/塩見章などの油画/版画背景;宇田川宣人(芸研修士課程)。
- 多摩美術大学:Akiko SIACCA、HIROMI TOMINAGA、Saka Mitsuhiro など。
- 武蔵野美術大学:久保木妃呂子、Kobayashi Tetsuro、田畑理恵、山根真奈など。
- 女子美術大学:磯崎式子、深尾良子など。
- 京都造形/京都芸術大学:浅野あかね、晶蔵など。
- 愛知県立芸術大学:YUKIKO(水彩連盟等の展示歴)、針谷智子(瀬戸窯業専攻)の背景に関連。
- 大阪芸術大学:関野凛太郎(芸術制作博士課程)など。
- 弘益大学(韓国)、梨花女子大学:HOLEE、柳賢淑など。
- Académie de la Grande Chaumière(パリ):柳賢淑の留学背景。フランス美術教育の伝統と連結。
三、ネットワーク構造:NAUから出発する「同心円」と「ブリッジ・ノード」
1) 中心圏(NAU直属および高頻度相互作用者)
- 髙橋俊明(NAU会長):制度と展示実務の中核人物として、NAUネットワークの中心ハブとなり、東京銀座画廊帯、国立新美術館、そしてNICAF/岡本太郎記念現代芸術大賞展など他の大型プラットフォームへと拡張している。
- 橋谷勇慈(NAU事務局長):画廊協力(Hinoki、Natsuka、正光画廊)と海外交流(スペイン、日本—欧州)の架け橋。
- 金丸順子、仁平和幸、神田風香、末本太丸、平昇、高橋詩桜里、戸沼牧子、Masaya Iwasaki、松下佐代、松村清司、Maho Laplante、杉山まさし、関野凛太郎、渡邊健吾、渡邊佐和子、渡辺信好、やちぐちひろゆき、野村雅美、宣和、西田裕子、二宮ちとせ、山田陽子 など:NAUと銀座—京橋画廊群の間で高頻度に相互作用する「コミュニティ・コア」を形成。
2) ブリッジ・ノード(跨団体/跨国プラットフォームの重要な連結者)
- 青木洲子:Salon Blanc(日仏現代国際美術展)との賞のリンク(フランス大使館賞、文部科学大臣賞)により、NAUとフランスのプラットフォームを緊密に結びつける。
- 久保木妃呂子:太平洋美術会運営委員+NAU;並びに東京都美術館やSalon Blancへの継続的な参加により、「日本西洋画の伝統的脈絡—NAU—フランス交流」をつなぐ。
- 渡邊佐和子:NAU前会長+墨人会会員;NAUを戦後現代書の源流と接合させる。
- 桑山真麻弓:大阪芸術大学ファイバー+AU/具体系企画への参加;関西ファイバー—具体美術—海外(ミラノ)デザインウィークを連結。
- 湯沢茂好:OBARA美術研究所出身+AU出品;具体美術企画や地方研究所のネットワークでNAUとつながる。
- 柳賢淑(韓)/HOLEE(韓):韓国の学術背景+ソウルの美術館群+パリの画廊;NAUと韓国、フランスの両端を結ぶ。
- 王穆提(台):現展台湾連絡所所長+NAU台湾初のメンバー;NAU—現展—台湾の大学や文化機関—北京798などのメディアプラットフォームを連結し、キュレーションとデータベース構築(2,000名以上のアーティスト)により多国間の情報と宣伝流を強化。
- 文珠川清:Salon Blanc実行委員長+日本美術家連盟会員;NAUと日仏プラットフォームの制度と審査レベルを串刺しにする。
- Maho Laplante:ニューヨーク・アート・スチューデンツ・リーグ奨学金+パリ、東京での展示歴;NAUとアメリカ—フランスの教育と展示の連鎖を接続。
- Akiko SIACCA:銀座画廊社長+現代アーティスト;NAUと銀座画廊の経営ネットワークを相互にカップリングさせる。
四、画廊帯(銀座—京橋)とNAUの「共振」
- Gallery Hinoki(ギャラリー檜)を典型的ハブとする
多数のNAU出品者が長年Hinokiで個展/選抜展を開催している(例:末本太丸、金丸順子、神田風香、トウキョウタカシ(Tokyo Takashi)、橋谷勇慈、Masaya Iwasaki、渡邊健吾 など)。
Hinokiのキュレーションのリズムは常にNAUの年度会期と前後して共振し、「国立新美術館(グループ展) ↔ 銀座—京橋(個展/二人展)」という二重軌道のノードを形成している。
- K’s Gallery(銀座)—毎年の個展習慣
戸沼牧子、鈴木齊、深尾良子、浜田夏子 などがK’s Galleryで安定した個展のリズムを持つことで、NAUアーティストは同一画廊ネットワーク内で「作品語彙の連続性」と「コレクターコミュニティの親密度」を蓄積している。
- Shirota Gallery(銀座)—現代からコンテンポラリーへの接続
上杉道子、浜田夏子、Akiko SIACCA などのShirotaとの長期的相互作用は、「銀座の伝統的画廊運営方式」と「NAUの現代的実践」を相互に対照させている。
- ACT(Artcomplex Center of Tokyo)—新鋭とコンペティション志向
woga、YU-KI、渡邊健吾 などのACTでの展示や大賞メカニズムは、NAUコミュニティに新しい血の流動(コンペ—グループ展—個展—国立新美術館)という昇級ルートを解放している。
五、学術圏—師承の脈絡と展示場での行動の相互増幅
1) 東京藝術大学(芸研、油画、版画)
- 宇田川宣人(芸研修士、九州産業大学名誉教授):学術職務+国際交流(米国ペンシルベニア客員)により、NAUと「学術評議—国際展示実務」を接続。
- 塩見章(油画科;MMG版画工房アートディレクター):学術技術面(版画工房)と画廊(Kaneko Art Gallery)の間に「技術リソース—展示リソース」の橋を架ける。
- 田島弘行(東京芸大油画—版画研究室):版画と油画の二刀流で、NAUの「多メディア共存」に実例を提供。
2) 多摩美術大学/武蔵野美術大学—首都圏学術の双璧
- Akiko SIACCA、HIROMI TOMINAGA、Saka Mitsuhiro、Kobayashi Tetsuro、田畑理恵、山根真奈 などが、首都圏二大美術大学系列の師承や校友展、大学院システムを通じて、NAUと「学術再生産メカニズム」を緊密に連携させている。
- 田畑理恵:教育学博士+書と抽象の領域横断的師承(米島清鶴、金子卓義/Steven Cushner)により、「東西メディア言語の融合」というモデルルートを提供。
3) 京都系(京都造形/京都芸術大学)—地域型現代語彙
- 浅野あかね、晶蔵、アレトコレココ などが京都系の訓練と画廊活動(京都同時代など)の間で、「地域美術圏—国立新美術館」という地域を跨ぐ引力を形成している。
4) 愛知/大阪系—中部と関西の補強
- 関野凛太郎(大阪芸術大学博士課程;シェル美術賞学生特別賞;Art Gate Program収蔵)などが、企業コレクションやオークション、アートフェア(ART OSAKA)へのルートを連結。
- 針谷智子(瀬戸窯業専攻):陶芸工房体制とロンドン、パリの個展を接続。
5) 海外学術と交流
- 柳賢淑(弘益大学/パリ La Grande Chaumière):韓国—フランス—日本の三角ネットワーク。
- HOLEE(梨花女子大学西洋画):ソウル国立現代美術館、フランス文化院と日本の展示実務を横断;NAUと韓国機関を直結。
- Maho Laplante(ニューヨーク・アート・スチューデンツ・リーグ):米国の教育リソース+東京とパリの二都市展示連動。
六、メディア・コミュニティと領域横断的連携
書/墨(現代書芸)
- 石井抱旦(前衛書家;毎日書道展審査会員):「漢字書道」の筆墨美学を多国籍な抽象視覚へと転化;イタリア、ドイツ、フランスでの展示経験により、日本墨文化の現代性を国際舞台へ導出。
- 渡邊佐和子(墨人会会員;NAU前会長):戦後現代書の源流とNAUの組織的ハブ、京都—東京の墨芸圏を連絡。
- 萌翠(墨人会、墨人賞):京都墨人の伝統とNAU現代グループ展の「筆墨の更新」。
- 柳谷みち代、山崎倖子:筆墨の線条美学で画廊の二人展と地方グループ展を結び、「小型展—大展」の階段的ルートを形成。
- 濱﨑道子(書道科;横浜・墨の美術館館長):書芸館—銀座—海外都市(パリ、カンヌ、ロンドン、ワルシャワ、スペイン)の多国間連携。
- 林和子(BKS会員;万華鏡芸術師承):「メディア拡張」のインターフェースで書芸、工芸美学と公共空間展示を連結。
ファイバー/工藝
- オギノキヨコ、岡本直枝、桑山真麻弓:大学時代のグループ展(よきなみ展)から日台交流展、さらにミラノデザインウィーク、美術祭や大型商業施設の美術空間(高島屋、美術画廊)へと、「生活美学—現代語彙」を接合。
- 針谷智子(瀬戸窯業):陶芸の師承とロンドン、パリの個展を連携させ、「工房—画廊—国際化」を強調。
版画/油画/抽象
- 塩見章(版画工房ディレクター):技術リソースセンター;小杉画廊、Kaneko Art Galleryとの展示。
- 田島弘行(版画研究室):油画、版画の二刀流;京王版画サロン、地球堂、KINGYOなどでの展示実践。
- 金丸順子、仁平和幸、佐藤利予、芝谷桂:抽象語彙の中で、Hinoki、AND LINKS 81、Yamate(横浜)などの画廊を通じて集合し、「抽象コミュニティ—銀座帯」を形成。
写真/映像
- トウキョウタカシ(Tokyo Takashi):PX3、IPA、FAPA、ロンドン国際クリエイティブ・コンペティション、ブダペスト国際写真賞などの国際写真コンペティション;NAUと世界の写真プラットフォームをつなぐ。
- 野村雅美:音楽—絵画—ライブペインティングのメディア横断行動により、「現場性—抽象性」の映像美学を形成。
- YU-KI:Photo Communication® 協会;東京代官山 Space K、RDECOなどでの展示により、写真コミュニティと銀座画廊を連結。
七、多国間ルートの雛形
- パリ軸:Salon Blanc(フランス大使館賞)— Galerie Métanoïa — Espace Sorbonne 4 — La Grande Chaumière(教育)。
- ニューヨーク軸:The Nippon Gallery/The Nippon Club — Lincoln Center Cork Gallery — Emerson Umbrella の水彩システム(YUKIKO)— 米国審査員奨学金(Maho Laplante)。
- ソウル軸:国立現代美術館—フランス文化院—多数の美術館(HOLEE、柳賢淑)。
- ミラノ/欧州デザインウィーク軸:桑山真麻弓(MILANO GENIUS)、M.A.D.S.(イタリア・ミラノ)。
- 東欧—中欧軸:Okayama Masaki(ポーランド・クラクフ国立美術館、ワルシャワ現代芸術センター収蔵)。
- 北陸—富山—北海道地方軸:Sugano Junko(富山交流)/Guarino Aki(富山レジデンスと越中アートフェスタ)/Etsuko Fukue(北海道美術協会—札幌、小樽展示実務)。
八、先行洞察
- NAUは構造化された「グループ展—個展—学術—海外」のハブである:国立新美術館の年度会期と銀座—京橋画廊帯の個展リズムを通じて、作品語彙の「連続性」、観客コミュニティとコレクターコミュニティの「予見可能性」を形成している。
- ブリッジ型アーティストがネットワークの外延半径を決定する:青木洲子(フランスの賞)、久保木妃呂子(太平洋美術会)、渡邊佐和子(墨人会)、桑山真麻弓(具体×ミラノ)、柳賢淑/HOLEE(韓国×パリ)および王穆提(台湾×現展×メディア×データベース)などが、NAUの多国間への触手を著しく拡張している。
- 学術システムが方法と言語の「再生産」を提供する:東京芸大/多摩/武蔵野/女子美/京都系/大阪芸大などが、メディアと方法論を展示の現場で持続的に更新させている;師承の連鎖と工房体制(MMG版画工房、OBARA美術研究所など)は技術リソースの安定した支えとなっている。
- メディア・コミュニティの交差が未来の方向性である:書芸—抽象、ファイバー—具体、版画—油画、写真—インスタレーションの交差言語は、海外プラットフォームでより容易に識別と共鳴を得て、拡張可能な物語を形成する。
【IV. 序章:権威と礎 (Prologue: The Foundations)】
2. 髙橋俊明 (Takahashi Toshiaki)
- 学術的位置づけ:NAU会長 / 空間構成の教育者
- 経歴概要: 東京学芸大学大学院絵画講座 / 岡本太郎記念現代芸術大賞展。
- [学術講評]:
- NAUの舵取り役として、高橋俊明の作品は東京学芸大学の系譜特有の「理性」と「構造」を体現している。彼の絵画は単なる平面装飾を超え、建築的な空間構成意識を示している。彼は色彩の推移 (Color Progression) と幾何学的な分割を巧みに操り、インスタレーションにおいて深遠な3Dフィールドを構築する。その作品は視覚的な享受であるだけでなく、「いかに空間に介入するか」という課題に対する厳粛な学術的応答でもある。
3. 橋谷勇慈 (Hashiya Yuji)
- 学術的位置づけ:科学的理性と抽象美学の統合
- 経歴概要: NAU事務局長 / 名古屋大学(ノーベル賞・赤崎勇研究室メンバー)。
- [学術講評]:
- 橋谷勇慈は現代アート界でも稀有な「科学者アーティスト」である。ノーベル物理学賞チームの研究背景が、彼の抽象絵画に独特の「アルゴリズム的美学 (Algorithmic Aesthetics)」を与えている。彼の線と色面は感性の発露に由来するものではなく、結晶構造や回路マトリックスのように、ある種の内在的な宇宙の秩序に従っている。彼はNAU展における「理性の眼」の代表である。
4. 光行洋子 (Mitsuyuki Yoko)
- 学術的位置づけ:九州画壇のアカデミック・マトリチアーク(ゴッドマザー)
- 経歴概要: 九州産業大学名誉教授 / アジア国際美術展副代表。
- [学術講評]:
- 「名誉教授」という崇高な学術的肩書きを持つ光行洋子は、日本洋画界の正統と伝承を代表している。彼女の作品は巨匠クラスの空間支配力を示している——色彩は重厚でありながら滞りなく、構図は壮大でありながら細部が豊かである。九州地区の芸術教育のリーダーとして、彼女の画作には深い人文的配慮と歴史的底流が流れており、展覧会の学術的重心を安定させている。
5. 宇田川宣人 (Udagawa Nobuhito)
- 学術的位置づけ:国際的視野の下での地域深耕
- 経歴概要: 九州産業大学名誉教授 / 福岡市美術連盟理事長 / ペンシルベニア大学客員。
- [学術講評]:
- 宇田川宣人の芸術実践は東西の境界を越えている。福岡美術界の行政的核であり教育者でもある彼の作品は、日本洋画の確かな基礎と欧米現代アートの構成ロジックを融合させている。彼はNAUが推進するAAN (Asian Artists Network) の重要な支柱であり、その作品自体が異文化コミュニケーションのメディアとなっている。
6. 久保木妃呂子 (Kuboki Hiroko)
- 学術的位置づけ:百年洋画史の守護者
- 経歴概要: 太平洋美術会運営委員 / Salon Blanc 出品。
- [学術講評]:
- 太平洋美術会は日本最古の洋画団体である(明治期創立)。久保木妃呂子はその運営委員として、日本洋画百年の歴史の重みを背負っている。彼女の作品は伝統的油彩画の「絵画性 (Painterliness)」を堅持し、筆触の温度と絵具の質感を強調し、流行を超越した古典的な強靭さを示している。
【Chapter I】 墨の弁証法——空間、気韻、そして脱構築
Dialectics of Ink: Space, Gesture, and Deconstruction
[キュレーター・ガイド]
本章では、現代アートにおける「墨」の二つの道筋を探求する。一方は、日本の前衛書道による「文字の意味の剥離」と「空間の爆発」であり、もう一方は、台湾の現代漢墨による「文人精神の現代化」と「気韻の持続」である。
【Section 1: 二大女流の対話 (Dialogue of the Matriarchs)】
7. 渡邊佐和子 (Watanabe Sawako)
- 学術的位置づけ:前衛書道の正統 / 空間の切断者
- 経歴概要: NAU前会長 / 墨人会会員 / 比田井南谷、森田子龍に師事。
- [学術講評]:
- 渡邊佐和子は戦後日本前衛芸術史の生き証人である。「墨人会」の直系の継承者として、彼女の創作の核心は「筆蝕」——すなわち筆鋒と紙の繊維が激しく摩擦した後に残る生命の痕跡にある。彼女の作品において、漢字の形体は徹底的に解体され、純粋な白黒のエネルギーの塊へと転化している。彼女の空間処理は極めて強い侵略性と建築感を持ち、墨跡は虚空に描かれた稲妻のようである。これは静的な書字ではなく、身体エネルギーが瞬間に爆発した後の「凝固した時間」である。
8. 連瑞芬 (LIEN Jui-Fen)
- 学術的位置づけ:台湾書壇のリーダー / 現代の文人気韻
- 経歴概要: 台湾女書法家学会理事長 / 澹廬文教基金会董事長。
- [学術講評]:
- 日本の書道が瞬間の爆発を追求するとすれば、連瑞芬は「時間の持続(ベルクソン的綿延)」を提示している。台湾書壇の重要なリーダーとして、連瑞芬は曹秋圃の系譜(澹廬)にある「書道禅」の真髄を深く体得しており、線は力強く弾力に富んでいる。しかし、彼女は伝統的な条幅にとどまらず、現代絵画の「全面構図(オールオーバー)」と「余白の美学」を大胆に書へと導入している。彼女の作品は独特の「統率力」を示しており、一見自由奔放な行草の線の中に厳格な構造的秩序を含んでおり、古典的教養と現代的視覚言語の完璧な融合である。
【Section 2: 構造、立体、そして実験 (Structure, Dimension & Experiment)】
9. 石井抱旦 (Ishii Hotan)
- 学術的位置づけ:立体書道 / 国際化された書字言語
- 経歴概要: 毎日書道展審査会員 / イタリア、ドイツ、フランスで活躍。
- [学術講評]:
- 石井抱旦は一つの核心的な問いの解決に尽力している。「いかにして漢字を読めない西欧の観客を書法で感動させるか?」彼の答えは「立体化」と「建築化」である。彼は書の線を建築の梁や柱と見なし、2Dの紙面上に3Dの空間的深度を構築する。その作品は強い彫刻感を持ち、書道がグローバルな現代アートへと向かう成功例である。
10. 王詮富 (WANG-CHUAN FU)
- 学術的位置づけ:水墨の物質性実験 / アカデミーの新鋭
- 経歴概要: 国立台北芸術大学 (TNUA) 美術修士。
- [学術講評]:
- 王詮富は台湾の若い世代のアカデミズムによる水墨への革新的視点を代表している。彼は水墨を単なる書字の道具としてではなく、アクリルや油絵具と同等の「物質 (Material)」として捉えている。彼は画面上で堆積、洗い出し、テクスチャーの生成を行い、「書」と「絵画」の境界を曖昧にし、実験的な性質を帯びた視覚的張力を提示している。
11. 陳福祺 (CHEN FU-CHI)
- 学術的位置づけ:映像と墨象のクロスオーバー / 写真の眼による書字
- 経歴概要: 台湾本土撮影学会会長 / 広角撮影学会会長。
- [学術講評]:
- 陳福祺は台湾写真界の重要なリーダーであり、今回は「現代書道」への越境展示を行っている。彼の書字は強烈な映像ロジックを帯びている。漢字の構造に対するレイアウトは、あたかも写真における「フレーミング (Framing)」や「構図」のようであり、空間の切断と虚実の対比に極めてこだわっている。これは「シャッターの眼で筆を運ぶ」独特の実践であり、視覚芸術の原理が高度に通底していることを証明している。
12. 濱﨑道子 (Hamasaki Michiko)
- 学術的位置づけ:墨の文化的翻訳者
- 経歴概要: 横浜・墨の美術館館長。
- [学術講評]:
- 濱﨑道子の作品は優雅な「流動性」を持っている。彼女は東洋の「線の美学」をいかにして西洋世界へ翻訳するかを熟知している。彼女の創作は単一の筆画における豊かな変化——濃墨の焦燥から淡墨の滲みまで——に焦点を当て、紙の上で水と墨が交じり合うミクロコスモスを提示している。
13. 萌翠 (Hosui)
- 学術的位置づけ:紙と墨の浸透学
- 経歴概要: 墨人会会員。
- [学術講評]:
- 墨人会の一員として、萌翠は「浸透 (Osmosis)」のプロセスに関心を寄せている。作品は、時間の経過とともに墨汁がいかにして紙の繊維を侵食し、滲んでいくかを提示する。これは極めて内省的な創作であり、観客を静謐な東洋的瞑想へと誘う。
14. 廖純沂 (Liau, Chun-Yi)
- 学術的位置づけ:儒醫伝統の現代文人画 / 癒やしの水墨
- 経歴概要: 中山医学大学博士 / 国際書画展で活躍。
- [学術講評]:
- 廖純沂は「儒医」の伝統を受け継ぎ、具象的な「水墨画」を修身のメディアとして選択している。筆墨の間には、医者特有の仁心と平和が漂っている。彼は奇をてらった構図を追わず、墨色の濃淡と滲みを通じて、人文的な息吹に満ちた山水のイメージを構築し、展示会場に古典的で安定した力を提供している。
15. 姜金玲 (Jiang Jinling)
- 学術的位置づけ:膠彩と水墨の交融
- 経歴概要: 東海大学膠彩画専攻 / 姜一涵に師事。
- [学術講評]:
- 姜金玲の作品は、台湾水墨の霊動性と日本膠彩(岩彩)の重厚さを融合させている。現代水墨の巨匠・姜一涵に師事した背景により、彼女の作品は墨の響きの外に、鉱物顔料の煌めく質感と色彩の層(レイヤー)を加え、素材を超越した現代文人画風を提示している。
16. 柳谷みち代 (Yanagiya Michiyo)
- 学術的位置づけ:線の音楽性
- 経歴概要: 現代の墨と書。
- [学術講評]:
- 柳谷の作品は線のリズム感と音楽性を強調している。彼女は漢字の構造的束縛を打ち破り、空間の中で線を自由に舞わせる。その作品は往々にして軽やかな律動を帯びており、凝固した音楽の旋律のように、意味伝達機能から脱却した後の現代書字の純粋な形式美を提示している。
17. 栗原光峯 (Kurihara Koho)
- 学術的位置づけ:書道外交官
- 経歴概要: JIAS会員 / ベルギー・オランダ美術賞展優秀賞。
- [学術講評]:
- 書道の「国際化」に尽力している。栗原は筆墨の視覚言語を調整し、文字の意味的障壁を超えて、西洋の観客にも理解できる抽象的な線の芸術へと転化させる術を熟知しており、極めてコミュニケーション力の高い現代書芸である。
18. 井上一光 (Inoue Ikko)
- 学術的位置づけ:文字学の芸術的転化
- 経歴概要: 字統文字研究所所長 / 福岡文化賞。
- [学術講評]:
- 井上一光は書家であるだけでなく、文字学者でもある。彼は「甲骨文/金文」を原始的な呪術的記号へと還元しており、その作品は強烈な象形性と神秘性を持ち、極めて学術的深みのある「学人の書道」である。
19. 小川移山 (Ogawa Izan)
- 学術的位置づけ:行為書道と表現教育
- 経歴概要: ペニンシュラホテル収蔵。
- [学術講評]:
- 小川移山は書道を「表現教育」および「パフォーマンスアート」と定義している。彼の作品は書字プロセスにおける演技性と身体の介入を強調し、書道のエネルギーを公共空間へと放射しようとするもので、気宇壮大である。
20. 吉原緑香 (Yoshihara Ryokka)
- 学術的位置づけ:和洋折衷の書画
- 経歴概要: 日仏現代美術世界展優秀賞。
- [学術講評]:
- 吉原緑香はキャンバス上で東洋の筆墨の線と西洋の色彩構成を調和させることに成功し、異文化を跨ぐ視覚言語を創造し、「和洋折衷」の美的高みを示している。
21. 田畑理恵 (Tabata Rie)
- 学術的位置づけ:理論と実作の統一
- 経歴概要: 教育学博士。
- [学術講評]:
- 東洋の書道とアメリカの抽象絵画を結合させた田畑理恵の作品は、その美学理論の実践であり、キャンバス上で理性的な東西融合を行い、学術研究者の厳密さと異文化への視野を提示している。
【Chapter II】 絵画の物質学——情熱的な厚塗りから理性的な冷たい抽象へ
The Materiality of Painting: From Impasto Passion to Rational Abstraction
[キュレーター・ガイド]
スクリーン映像(Screen Image)が氾濫する現代において、絵画が存在する本体論的意義とは何か?NAUの回答は「物質の復権 (The Restoration of Materiality)」である。
本章では、物質的実践としての絵画の二つの極端を提示する。一方は日本洋画史を継承する「表現主義の系譜」であり、フォービズム的な色彩の爆発と身体的な筆触を強調する。もう一方は東京の現代画廊で活躍する「理性的抽象の系譜」であり、時間の堆積、絵具の物理的厚み、そして幾何学構造の冷静な構築を強調する。
【Section 1: 情熱と生命 (Passion & Life) —— 表現主義の系譜】
22. 通天櫻井洋美 (Tsuten Sakurai Hiromi)
- 学術的位置づけ:日本フォービズムの炎 / 触覚的視覚
- 経歴概要: 独立美術協会会友 / 池島勘治郎に師事。
- [学術講評]:
- 「独立美術協会」は1930年代の創立以来、日本の「フォービズム (Fauvism)」の砦であった。通天櫻井洋美の作品はこの血統を完璧に継承している。彼女は色彩の自然主義的な再現を拒絶し、色彩の「感情的真実 (Emotional Truth)」を追求する。彼女のキャンバス上で、絵具は平塗りされるのではなく、積み上げられ、ぶつけられる。燃えるような赤と深淵な黒が、強烈な視覚的対比を構成する。この「厚塗り法 (Impasto)」は画面に強力な彫刻感を与え、あたかも2D平面の制約を突破して観客の網膜を直撃し、「触覚的視覚 (Haptic Visuality)」を呼び覚ますかのようである。
23. 磯崎式子 (Isozaki Noriko)
- 学術的位置づけ:光と色の織り手 / 視覚的快楽
- 経歴概要: 一陽会絵画部委員 / 女子美術大学 / 一陽賞。
- [学術講評]:
- 磯崎式子の作品は「一陽会」特有の美学の伝統——光と影、色彩の調和への究極の追求——を示している。彼女は細かい筆触を駆使することに長けており、無数の色調を流動的なスペクトルへと織り上げる様は、印象派による光の捕捉のようであるが、より現代的な装飾性を持っている。彼女の画面は往々にして温かな「視覚的快楽 (Visual Pleasure)」に満ちており、難解な観念的説教はなく、純粋な色彩が空間の中で律動しており、現代の冷淡な疎外感に対する解毒剤となっている。
24. 仁平和幸 (Nihira Kazuyuki)
- 学術的位置づけ:時間の地質学 / 物質の堆積
- 経歴概要: NAU正式会員 / Gallery Hinoki 年度精選展。
- [学術講評]:
- 仁平和幸の絵画は「時間」の物理的な提示である。彼はキャンバスに具象を描くのではなく、終わりのない絵具の堆積と削り出しを行う。近距離で彼の作品を見ると、表面には地層の断層のような肌理(テクスチャー)と亀裂が満ちているのがわかる。この「物質性 (Materiality)」は、デジタル映像の平坦化に対抗する最も強力な武器であり、観客に考古学的な凝視を行うよう誘う。
25. 金丸順子 (Kanemaru Junko)
- 学術的位置づけ:内なる風景の翻訳
- 経歴概要: NAU正式会員 / 国立新美術館常連。
- [学術講評]:
- 金丸順子の創作は長期にわたり「内なる風景 (Inner Landscape)」と「光と影の律動」に焦点を当てている。彼女は現代日本の抽象画界において、物質性と精神性を優雅に結合できる代表的人物である。国立新美術館での展示作品は、往々にして繊細な色彩の層で観客の深層的な共鳴を引き起こし、極めて高い視覚的完成度と詩的な雰囲気を示している。
26. 小林哲郎 (Kobayashi Tetsuro)
- 学術的位置づけ:社会派表現主義
- 経歴概要: 武蔵野美術大学 / 独立美術 / JAALA 国際交流展。
- [学術講評]:
- 小林哲郎の筆触は粗野な原始的力を帯びている。JAALA (日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯) の背景と結びつき、彼の作品は往々にして社会現実や人間の境遇に対する関心を暗示している。彼は筆触の粗さを修飾しないが、この「未完成感 (Non-finito)」がかえって画面の真実味と迫力を強めており、社会的発言のツールとしての絵画の実践である。
27. Maho Laplante
- 学術的位置づけ:ニューヨーク派の直系 / アクション・ペインティング
- 経歴概要: ニューヨーク・アート・スチューデンツ・リーグ奨学金 / リンカーン・センターで展示。
- [学術講評]:
- Maho Laplanteの作品は、観客をニューヨーク抽象表現主義の黄金時代へと連れ戻す。ポロックやロスコの母校の伝統を受け継ぎ、彼女の絵画は「行動 (Action)」を強調する。キャンバスは彼女の身体運動の記録の場であり、絵具の垂れ流し(ドリッピング)、飛沫(スプラッシング)、ひっかき(スクラッチ)は、創作の瞬間のスピード感と偶然性を留めている。これはアメリカ的な自由と奔放さであり、日本の伝統的な内向的美学と鮮やかな対照をなしている。
28. 深尾良子 (Fukao Ryoko)
- 学術的位置づけ:心象風景のレイヤー
- 経歴概要: 女子美術大学 / 茨城県展特賞 / 新象展協会賞。
- [学術講評]:
- 深尾良子は女子美術大学出身の実力派である。彼女の作品は女性アーティスト特有の感性と強靭さを示している。色彩の層は豊かで、自然界の移ろいやすい光と影の変化を捉え、それを内在的な心象風景へと転化することに長けている。「新象展」での受賞歴は、具象と半抽象の間を自在に行き来するその造形能力を証明している。
29. 豊崎旺子 (Toyosaki Okiko)
- 学術的位置づけ:絵画の純粋性
- 経歴概要: 日本美術家連盟会員 / 銀座 O Gallery 個展。
- [学術講評]:
- 豊崎旺子は銀座 O Gallery など「絵画性」を重視する空間で活躍している。彼女の作品は奇観に依存せず、絵画の基本要素である色彩、構図、筆触のバランスに回帰している。その画作は往々にして幾重にも重なる厚みを帯びており、日本の中堅画家の確かな素養と絵画本体へのこだわりを示している。
【Section 2: 理性と沈殿 (Reason & Sediment) —— 物質抽象の系譜】
30. 和田廣司 (Hiroshi Wada)
- 学術的位置づけ:都市の幾何学的秩序 / 冷たい抽象
- 経歴概要: Gallery Hinoki で活躍 / 現代美術家。
- [学術講評]:
- 和田廣司の作品は現代都市体験の抽象化である。彼は水平と垂直の線を駆使し、厳格な「グリッド・システム (Grid System)」を構築する。この冷静な幾何学構成は、余分な感情の吐露を排除し、純粋な構造と秩序だけを残す。彼の画作はモダニズム建築の青写真のようであり、「冷たい抽象 (Cool Abstraction)」の知性美を示しており、理系的思考の芸術への投影である。
31. 平昇 (Taira Noboru)
- 学術的位置づけ:微視的世界の有機形態
- 経歴概要: 国立新美術館収蔵 / 銀座 Kobayashi 画廊。
- [学術講評]:
- 平昇は国立美術館体系から注目される実力派画家である。彼の作品の特色は極めて高い完成度と繊細なミクロの視点にある。彼は往々にして画面上に迷宮のような空間感を創り出し、色彩の層は豊かで微妙であり、あたかも有機生物の細胞構造や宇宙の星雲を探求しているかのようである。その作品の静謐な気質は、極めて高い収蔵価値を持たせており、「見飽きない」タイプの古典的現代絵画に属する。
32. HOLEE
- 学術的位置づけ:単色画の精神性 / 韓仏混血の美学
- 経歴概要: 韓国梨花女子大学 / フランス・グランド・ショミエール / 国立新美術館個展。
- [学術講評]:
- HOLEEの作品は韓国の「単色画 (Dansaekhwa)」精神の現代的継続である。彼女は単一の色の反復塗布を通じて、ある種の修行の境地に達している。しかし、フランス留学の背景は彼女により層のある色彩感を与えており、伝統的な単色画のような苦行ではなく、抒情的な抽象の詩情を帯びている。彼女の作品は会場において静かな「息継ぎの場 (Breathing Space)」を提供し、喧騒の中で観客の視覚に休息を与える。
33. 浜田夏子 (Hamada Natsuko)
- 学術的位置づけ:抒情的抽象の継承者
- 経歴概要: 東京芸術大学 (脇田和に師事) / 椿近代画廊。
- [学術講評]:
- 浜田夏子は抒情的抽象の巨匠・脇田和に師事し、その温かさと詩情を受け継いだ。彼女の色彩運用は柔らかく音楽性に富んでおり、東京芸大油画科の深い色彩的教養を示している。画面の中の曖昧な境界と滲みは、記憶の残像のように、過ぎ去った時間への郷愁を観客に引き起こす。
34. 香西洋子 (Kozai Yoko)
- 学術的位置づけ:現代美術のクロスオーバー対話
- 経歴概要: 六本木アートサークルで活躍 / Gallery Hinoki。
- [学術講評]:
- 香西洋子は長期にわたり現代美術の領域横断的な対話を推進している。彼女の作品形式は柔軟で、単一のスタイルに拘泥せず、色彩、形態、構図のリズム感を重視している。Gallery Hinoki での展示において、彼女は繊細かつ内省的な視覚言語を提示し、観客と作品の間の知覚的共鳴を強調している。
35. 神田風香 (Kanda Fuka)
- 学術的位置づけ:線形美学の探求
- 経歴概要: 書道教育学会出身 / 国立新美術館出品。
- [学術講評]:
- 神田風香の背景は書道に由来するが、彼女の作品はすでに純粋な現代抽象へと転化している。彼女は空間における「線」の表現力に注力し、書字的な線がいかにして文字から離脱し、独立した視覚要素となるかを探求している。その作品は独特の「線形美学 (Linear Aesthetics)」により、異文化の評論家から注目されている。
36. 荒川久美子 (Arakawa Kumiko)
- 学術的位置づけ:版画的思考のレイヤー
- 経歴概要: 東京造形大学版画専攻 / Gallery Hinoki。
- [学術講評]:
- 荒川の作品は版画特有の「層の思考 (Layering)」を帯びている。絵画作品においてさえ、彼女は堆積と削り出しの技法を駆使し、版画のような「間接性 (Indirectness)」のある質感を作り出す。日韓交流芸術展での経歴は、彼女の作品の抽象構成における成熟度と国際的視野を示している。
【Section 3: 内なる風景と物語 (Inner Landscapes & Narrative)】
37. 佐藤利予 (Sato Toshiyo)
- 学術的位置づけ:微視的知覚の詩情
- 経歴概要: 現代美術家 / 沈思的な気質。
- [学術講評]:
- 佐藤利予の作品は日常の知覚と時間の層に関心を寄せている。彼女は繊細かつ抑制された視覚語彙を用いて、静かで沈思的な気質を提示する。喧騒に満ちた現代アートの中で、彼女の作品は短い詩のように、微小な存在への注目を観客に促す。
38. 今野明子 (Konno Akiko)
- 学術的位置づけ:記憶の残像の捕捉
- 経歴概要: 現代女性アーティスト / 存在感と記憶。
- [学術講評]:
- 今野明子の創作は「存在感」と「記憶の残像」を巡って展開される。彼女は女性特有の繊細な視点で、日常の中で見過ごされがちな断片を捉える。画面は往々にして朧げな美しさを帯びており、消えゆく瞬間を留めようとしているかのようである。
39. 岡田繁忠 (Okada Shigetada)
- 学術的位置づけ:自由表現の現代性
- 経歴概要: 現代美術家。
- [学術講評]:
- 岡田繁忠の作品は伝統的な公募展の束縛から離脱し、自由表現を志向している。彼は抽象絵画とコラージュ技法を結合させ、物質と画面空間の関係を探求し、形式に対する現代美術家の自由な探求を示している。
40. 知京一樹 (Chikyo Kazuki)
- 学術的位置づけ:抽象と具象の境界
- 経歴概要: 現代美術家。
- [学術講評]:
- 知京一樹の創作は具象的な記号と抽象的な背景の間を遊走する。彼は画面上に新たな秩序を確立しようと試み、形式の解体と再構築を通じて、観客を超現実的な視覚体験へと導き、NAU展の視覚スペクトルを豊かにしている。
41. チサカマキ (Chisaka Maki)
- 学術的位置づけ:感性色域の編み込み
- 経歴概要: 現代美術家。
- [学術講評]:
- チサカマキの作品は色彩運用において独特の個人的語彙を持っている。彼女は柔らかな、あるいは対比の強い色域を用いて画面を構築する傾向があり、現代生活における個人的感情の微細な波動を探求し、現代美術の中堅層による「絵画性」へのこだわりを示している。
42. 山崎倖子 (Yamazaki Sachiko)
- 学術的位置づけ:現代水墨の抽象化
- 経歴概要: 井原優山に師事 / 福岡市美術館個展。
- [学術講評]:
- 山崎倖子は現代水墨を師承しているが、その作品はすでに伝統の範疇を超え、抽象化へと向かっている。福岡市美術館での度重なる個展経験は、白黒の虚実と空間の余白の処理における彼女の深厚な力量を示しており、水墨精神の現代的転化を現している。
【Chapter III】 工芸の越境——場と彫刻
Material Transgression: Craft as Spatial Sculpture
[キュレーター・ガイド]
日本芸術史において、「工芸 (Kogei)」は長く実用機能の従属物と見なされてきた。しかし、第24回NAU展は工芸の「越境 (Transgression)」を宣言する。
本章のアーティストはもはや机上の愛玩物を制作するのではなく、粘土、絹糸、金属を空間と格闘する武器として見なしている。彼らは物質の「実用性」を剥ぎ取り、その「観念性」を解放した。津田智子による土の原始的な力の喚起から、中村白蘭による相撲儀式の解体に至るまで、これらの作品は、デジタル仮想時代において、物質の重さと触感だけが人類の眠れる感覚を呼び覚ませることを証明している。
【Section 1: 土の建築学 (Architecture of Clay) —— 現代陶芸インスタレーション】
43. 津田智子 (Tsuda Tomoko)
- 学術的位置づけ:場の彫刻家 / 物質の抵抗
- 経歴概要: NAUメンバー / 現代美術家 / 現代陶芸インスタレーションで活躍。
- [学術講評]:
- 津田智子は「工芸的器」としての陶芸の伝統的定義を根底から覆す。彼女にとって、陶土は空間と格闘する武器である。彼女は烈火による焼成後の収縮、亀裂、崩落を利用し、物質の最も原始的な暴力と生命力を提示する。国立新美術館の高い天井空間において、彼女の作品は往々にして古代遺跡や地質構造のような建築感を呈する。彼女は陶土自身の重量感と粗い肌理を残しており、この物質的な「抵抗」は、観客に対して単に目で走査するだけでなく、身体を用いて空間における作品の圧迫感を感知することを強いる。彼女は「工芸」を「空間芸術 (Spatial Art)」へと引き上げる重要な実践者である。
44. 李佳玲 (Lee, Jia-Ling)
- 学術的位置づけ:陶芸、アクリル、産業のクロスオーバー
- 経歴概要: 皇墨芸芸術董事長 / 全国学生美展佳作受賞。
- [学術講評]:
李佳玲の創作は、素材の境界を自由に越える表現を示しています。彼女は単一の形式に満足せず、「陶芸」の立体造形と「アクリル絵具」の現代的な色彩を組み合わせています。李佳玲はアクリル絵具を用いて直接制作に介入することを選び、作品により強い絵画性と色彩の飽和感を与えています。
皇墨藝藝術の董事長として、彼女の視野は創作にとどまらず、芸術の産業化への応用にも広がっています。NAU 展覧会場では、彼女の作品は現代アートを抽象化し、色彩をファッショナブルにする試みを示しており、当代アートが生活美学や商業空間に介入する可能性を表現しています。
45. 田嶋初 (Tajima Hajime)
- 学術的位置づけ:人間国宝の現代的転身 / 釉色の極致
- 経歴概要: 竹内彰(富本憲吉、近藤悠三の系譜)に師事 / 国立新美術館出品。
- [学術講評]:
- 田嶋初の後ろには、日本陶芸史の巨人たちが立っている。富本憲吉(色絵磁器)と近藤悠三(染付)は共に日本の「人間国宝」であり、民芸と現代陶芸の最高峰を代表している。田嶋初はこの正統な血脈を継承しているが、伝統に束縛されてはいない。彼の作品は造形においてより簡潔で抽象的であり、焼成過程における釉色の微妙な変化に専注している。その作品は「制御の中の偶然」——厳格な造形ロジックの下で、釉薬を自然に流動させること——を示している。これは伝統工芸技法と現代造形美学の完璧な結合である。
46. 服部牧子 (Hattori Makiko)
- 学術的位置づけ:有機的生物形態 / 微視世界の拡大
- 経歴概要: 陶磁器デザイン集団「The Earth」創設メンバー / 多治見市美術展市長賞。
- [学術講評]:
- 津田智子の建築感とは異なり、服部牧子の陶芸は「生物形態 (Biomorphism)」的である。彼女の作品は深海の珊瑚、顕微鏡下の胞子、あるいはある種の未知の有機生命体のようである。彼女は極めて繊細に陶土の表面テクスチャーを処理し、無数の孔や突起を作り出す。この複雑な細部への執着は、硬い陶磁器に柔らかく、呼吸しているかのような錯覚を与える。彼女の作品が探求するのは生命の成長の律動であり、冷たく硬い美術館空間に有機的な生命力を注入している。
47. 針谷智子 (Hariya Tomoko)
- 学術的位置づけ:瀬戸伝統の国際化
- 経歴概要: 瀬戸窯業専攻 / 志賀重雄に師事 / ロンドン、パリで個展。
- [学術講評]:
- 日本六古窯の一つ「瀬戸」出身でありながら、現代アートの中心地ロンドンで活躍している。針谷智子の作品は二つの陶芸伝統の混血である。彼女は瀬戸焼の精緻な釉薬技術を保持しつつ、造形においてはヨーロッパ現代陶芸の観念性と彫刻感を吸収している。彼女は日本の伝統工芸語彙を「国際的に翻訳」した成功例である。
48. 山根真奈 (Yamane Mana)
- 学術的位置づけ:民俗学とデザインの融合
- 経歴概要: 武蔵野美術大学工芸工業デザイン / 妖怪・モノノケコンテスト受賞。
- [学術講評]:
- 山根真奈は「デザイン思考」を陶芸に持ち込み、日本の深厚な「民俗学 (Folklore)」の基盤と結合させている。「妖怪」をテーマにしたコンテストへの参加作品は、彼女が伝統文化における神怪の記号を現代的に転化することに長けていることを示している。彼女の作品は単なる物体ではなく、物語機能を持つキャラクターであり、現代工芸のナラティブの新たな可能性を示している。
【Section 2: 繊維の脱構築 (Deconstruction of Fiber) —— ソフト・スカルプチャー】
49. 中村白蘭 (Nakamura Hakuran)
- 学術的位置づけ:文化的記号の解体者 / 儀式の再編
- 重要素材: 大相撲化粧廻し (Sumo Kesho-mawashi) の絹糸。
- [学術講評]:
- 中村白蘭が行っているのは難度の高い文化的実験である。彼女は極めて日本的な文化的負荷を持つ素材——相撲力士が神聖な儀式で身につける「化粧廻し」の希少な絹糸——を選んだ。彼女は本来力と階級を象徴するこれらの織物を「脱構築 (Deconstruction)」し、無数の遊離した糸へと解体し、空間の中で宇宙の胎動や神経ネットワークのようなインスタレーションとして再編する。これは「具象的な儀式」を「抽象的な霊性」へと昇華させるプロセスであり、本展において最も文化的衝撃力を持つインスタレーション作品である。
50. 岡本直枝 (Okamoto Naoe)
- 学術的位置づけ:工業構造とソフト・スカルプチャー
- 経歴概要: 武蔵野美術大学修士 / 元日産自動車デザイナー / Antonio Ratti 賞。
- [学術講評]:
- 17年間の自動車デザイナーとしての経験は、岡本直枝の芸術語彙に深刻な影響を与えた。彼女は物質の「構造 (Structure)」を見抜いている。伝統的なファイバーアートの編み込み感とは異なり、彼女の作品は繊維で構成された建築模型のようである。彼女は繊維の張力と弾性を利用し、精密な3Dグリッドを構築する。国際的なテキスタイル大賞であるAntonio Ratti賞の受賞は、「ソフト・スカルプチャー (Soft Sculpture)」の構造的可能性の探求における彼女の国際的地位を証明している。
51. 桑山真麻弓 (Kuwayama Mayumi)
- 学術的位置づけ:光と繊維のテクノロジー・クロスオーバー
- 経歴概要: 大阪芸術大学 / ミラノデザインウィーク (MILANO GENIUS) 受賞。
- [学術講評]:
- 桑山真麻弓は「芸術 (Art)」と「技術 (Tech)」の越境者である。彼女は繊維を使うだけでなく、「光 (Light)」を導入する。彼女のインスタレーション作品は、光ファイバーや特殊な反射素材を利用し、暗闇の中に発光する虚体を創り出す。この創作は物質の境界を曖昧にし、繊維を光の媒体へと変える。ミラノデザインウィークでの成功は、彼女の作品が強烈な現代的デザイン感覚と未来感を持っていることを示している。
52. オギノキヨコ (Ogino Kiyoko)
- 学術的位置づけ:繊維の平面絵画性
- 経歴概要: 現代ファイバー作家 / 日台交流展。
- [学術講評]:
- オギノキヨコは繊維を絵画の絵具と見なしている。彼女は抽象画と平面芸術の分野で評価されており、繊維の質感の差異(粗さ、滑らかさ、もつれ)を利用して筆触の代替としている。その作品は視覚的に豊かな層(レイヤー)を呈しており、「タブロー(壁掛け絵画)」形式におけるファイバーアートの表現力を示している。
53. 田中みづほ (Tanaka Mizuho)
- 学術的位置づけ:幾何学的コラージュの現代性
- 経歴概要: キルトジャパン審査員賞 / 岐阜県知事賞。
- [学術講評]:
- 田中みづほは「パッチワークキルト (Quilt)」を手工芸から現代幾何学芸術へと引き上げた。彼女は色彩と図形の構成に対して極めて高い感度を持っており、布地の接合を通じて、「オプ・アート (Op Art)」のような視覚的錯視と律動感を創り出している。これは温かみのある理性主義である。
【Section 3: 錬金術と越境 (Alchemy & Cross-over)】
54. 土門理恵 (Domon Rie)
- 学術的位置づけ:金属絵画 / 廃墟の美学
- 経歴概要: ミクストメディアと彫金 / 日台文化交流展。
- [学術講評]:
- 土門理恵は絵画領域の「錬金術師」である。彼女は金属工芸における「腐食」「鍛造」技法を平面創作に導入した。彼女のキャンバス表面は化学反応後の斑状の錆や金属光沢で満たされており、「産業廃墟 (Industrial Decay)」のような退廃的美学を呈している。彼女は物質が時間の中で衰退していく過程を捉えることに成功し、画面に重厚な歴史感を与えている。
55. SHUICHI GOTOH
- 学術的位置づけ:宝石学と絵画の屈折
- 経歴概要: ブラジル FAAP 美術大学 / ジュエリーデザイナー / カラーストーン専門家。
- [学術講評]:
- SHUICHI GOTOHの経歴は極めて特殊である——ブラジルの美術教育の情熱とジュエリーデザインの精密さを結合させている。彼は「宝石学 (Gemology)」の視点を絵画に持ち込んでいる。その作品は宝石特有の屈折光線と結晶の切子面を捉えており、色彩は鮮やかで南米的な奔放さを持っている。これは装飾芸術と純粋芸術の境界を越えた視覚的実験である。
56. かとうかずみ (Kato Kazumi)
- 学術的位置づけ:金属の詩情
- 経歴概要: 愛知県立芸術大学大学院 / 金属アートミュージアム出品。
- [学術講評]:
- かとうかずみの作品の足跡は世界百カ所以上に及び、その金属芸術が異文化への感染力を持っていることを示している。彼女は金属の堅固さや冷たさを強調せず、むしろその柔軟性と展延性を掘り下げている。作品は往々にして予想外の軽やかさを呈しており、あたかも金属が紙や布のように折り畳まれ、成形できるかのように、卓越した工芸技術と詩的な転化を示している。
57. 阿部雅光 (Abe Masamitsu)
- 学術的位置づけ:和紙の材質対話
- 経歴概要: 阿波和紙会館賞 / 版画家。
- [学術講評]:
- 阿部雅光は「和紙 (Washi)」と版画の結合に専注している。阿波和紙会館賞を受賞した彼は、紙の繊維の特性を熟知している。彼の作品は単に紙に印刷するだけでなく、墨色を紙の肌理に浸透させる。これは材質との深い対話であり、平面芸術における日本工芸美学の繊細な応用を示している。
58. 小澤雅美 (Ozawa Masami)
- 学術的位置づけ:素材の本真性
- 経歴概要: 手漉き和紙作家 / 自然素材。
- [学術講評]:
- 小澤雅美は紙の根源に回帰する。楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)などの植物繊維を利用して手漉き和紙創作を行う。これは「引き算の美学 (Subtractive Aesthetics)」であり、彼女は過度な色を強要せず、紙そのもののテクスチャー、厚み、光沢に語らせ、自然素材と環境問題への回帰という現代アートのテーマに呼応している。
【Chapter IV】 未来の視界——デジタルの崇高、身体、そしてハイブリッド
Future Horizons: Digital Sublime, The Body & Hybridity
[キュレーター・ガイド]
芸術の境界はどこにあるのか?絵画と工芸が「物質」の極限を探求した後、本章は観客を「非物質」と「流動」の領域へと導く。
Tokyo Takashi によるデジタル風景への凝視から、具体派の後継者・湯沢茂好による肉体で空間に衝突するパフォーマンスアート、そしてサブカルチャーを融合させた Aretokorekoko の奇異な彫刻まで。ここで展示されるのは21世紀芸術の「拡張された場 (Expanded Field)」である——芸術はもはや壁にかかった物体にとどまらず、光学的な幻影、瞬間の動作、そして虚実を超えた記号の再編なのである。
【Section 1: デジタルの崇高と映像 (The Digital Sublime & Imaging)】
このセクションでは、写真とデジタルアートがいかにして現代社会の視覚体験を捉えているかを展示する。
59. トウキョウタカシ (Tokyo Takashi)
- 學術的位置づけ:デジタル時代の崇高美学
- 経歴概要: パリ写真賞 (PX3) / 国際写真賞 (IPA) / ロンドン国際クリエイティブ・コンペティション名誉賞。
- [学術講評]:
- Tokyo Takashi の作品は、カント (Kant) の「崇高 (Sublime)」概念に対するデジタル的な応答である。彼のレンズの下の都市と自然は、高度なデジタル再構築と色彩強調を経て、肉眼で見るものを超えた完璧さと壮麗さを呈している。この高彩度で超現実的な視覚言語は、スクリーンとビッグデータに包囲された我々の時代の特質を精確に捉えている。PX3やIPAなど国際コンペティションでの席巻記録は、彼の視覚語彙が文化を超えた普遍的な求心力を持っていることを証明しており、現代デジタル写真コレクションの指標的人物である。
60. YU-KI
- 学術的位置づけ:写真心理学 / 関係性の美学
- 経歴概要: Photo Communication® 協会修士 / PCA 賞 / M84 賞。
- [学術講評]:
- Tokyo Takashi の形式美学とは異なり、YU-KI は写真を一種の「関係性の美学 (Relational Aesthetics)」のツールと見なしている。彼の作品の核心は構図の正確さではなく、レンズを通じて観る者と被写体の間に感情的なつながりを築くことにある。これは温度感と心理学的な深みを持った映像実践であり、冷淡なテクノロジー時代において、写真が本来持っていたコミュニケーションと癒やしの機能を我々に想起させる。
61. 西田裕子 (Nishida Yuko)
- 学術的位置づけ:時間の暫留
- 経歴概要: 現代美術家 / 映像と平面創作。
- [学術講評]:
- 西田裕子のテーマは「暫留 (Suspension)」である。加速主義の時代において、彼女は映像や絵画を通じて見過ごされた静止した瞬間を捉える。作品は淡い憂いと詩情を帯びており、観客の感覚のリズムを緩め、内在的な凝視を行うよう誘う。
62. 宣和 (Senwa)
- 学術的位置づけ:風景の動態学
- 経歴概要: 現代美術家 / NAU 常連出品。
- [学術講評]:
- 坂元宣和は「風景の動態 (Dynamics of Landscape)」に専注している。彼が捉えるのは静止した景色ではなく、風の流れ、光の推移である。その作品は色彩豊かで律動感に満ちており、筆触にはスピード感があり、気韻生動な現代風景画スタイルを示している。
【Section 2: 歴史の残響と身体 (Echoes of History & The Body)】
このセクションは、日本戦後最強の前衛運動「具体派」とパフォーマンスアートをつないでいる。
63. 湯沢茂好 (Yuzawa Shigeyoshi)
- 学術的位置づけ:具体派精神の継承者 / 物質の行動
- 経歴概要: AU (Artists Union) / 嶋本昭三 (具体派創始者) 企画に参加。
- [学術講評]:
- 湯沢茂好は1950年代の日本前衛運動と現代をつなぐへその緒である。「AU」のメンバーとして、彼は「具体派 (Gutai)」の精神——「人の真似をするな、未だかつてないものを創れ」——を直接継承している。彼の作品は美しい画像を描くことにはなく、絵具と物質が瞬間の行動の中で残した痕跡を提示することにある。これは「アクション・ペインティング (Action Painting)」の生きた化石であり、創作のその瞬間の身体介入を強調している。
64. 万城目純 (Manjome Jun)
- 学術的位置づけ:身体の政治 / 舞踏美学
- 経歴概要: ロッテルダム国際映画祭 / MHKA 美術館 (アントワープ)。
- [学術講評]:
- 日本の「舞踏 (Butoh)」の暗黒美学に深く影響を受け、万城目純は身体を彫刻へと転化させる。展示会場での彼のパフォーマンスアートや映像作品は、往々にして社会空間における身体の抑圧、歪み、解放を探求している。彼の存在はNAU展に「ライブ性 (Liveness)」をもたらし、静的な展示を動的な儀式へと変えている。
65. 和田幸三 (Kozo Wada)
- 学術的位置づけ:行動美術の硬骨
- 経歴概要: 行動展 (1977-1985) / 新象展 / 2025年逝去。
- [学術講評]:
- 行動美術協会の古参として、和田幸三の遺作展示はある歴史への敬意である。彼の作品は戦後日本美術のあの粗野で、素朴で、生命力に満ちた精神を保持している。彼の長年にわたる銀座画廊圏での耕耘は、日本現代美術の変遷を目撃してきた。彼の画作はその世代の芸術家による「絵画の純粋性」へのこだわりの最後の証言である。
【Section 3: 新彫刻とハイブリッド美学 (New Sculpture & Hybrid Aesthetics)】
このセクションでは、若い世代がいかにサブカルチャー、ストリートアートと伝統美術を結合させているかを示す。
66. アレトコレココ (Aretokorekoko)
- 学術的位置づけ:サブカルチャー・ハイブリッド / 現代彫刻のニューウェーブ
- 経歴概要: 京都市立藝術大学 / SICF23 審査員賞 / Independent Tokyo 特別賞。
- [学術講評]:
- SICF (Spiral Independent Creators Festival) など若手芸術家の登竜門となる賞を受賞した新鋭として、Aretokorekoko は日本現代彫刻の未来を代表している。彼の作品はアニメ・サブカルチャー (Subculture)、消費社会の記号、そして伝統的彫刻技法を混合させ、「ハイブリッド (Hybrid)」な奇異な美感を呈している。これこそデジタル・ネイティブ世代 (Digital Natives) による物質世界の独特な解釈である。
67. 渡邊健吾 (Watanabe Kengo)
- 学術的位置づけ:ポップな感性と都市記号
- 経歴概要: 国際美術大賞公募展準大賞 / ニューヨーク Nippon Gallery。
- [学術講評]:
- ニューヨークと東京で活躍する渡邊健吾は、若い世代の「ポップな感性 (Pop Sensibility)」を代表している。彼の作品は色彩明快で、ストリート・グラフィティやアニメ美学を融合させている可能性があり、グローバル化された消費文化の下での視覚体験を反映している。ACT アート大賞展での受賞は、彼の作品が商業と芸術の間でバランスをとっていることを示している。
68. woga
- 学術的位置づけ:自動書記の潜在意識 / アール・ブリュットの境界
- 経歴概要: 新宿眼科画廊 / The Artcomplex Center of Tokyo / ACT。
- [学術講評]:
- woga の作品は「アール・ブリュット (Art Brut)」の境界に触れている。彼は「自動書記 (Automatic Writing)」のような強迫的な反復描画を通じて、潜在意識の深層にある風景を掘り起こそうとしている。彼の画面上では、自然風景と心理現象が絡み合い、密集した線とトーテムはあたかも神経伝達の視覚化された記録のようである。この創作方法は単なるイラストの物語性を超え、儀式的な集中力と精神的張力を帯びている。
69. FASC
- 学術的位置づけ:匿名性と記号
- 経歴概要: 現代美術家。
- [学術講評]:
- 英字略称を名乗る FASC は、展覧会における「匿名性 (Anonymity)」と「記号化」の一面を代表している。その作品はストリートアート、ポップアート、あるいはミニマリズムの傾向を帯びている可能性があり、会場に神秘的で現代的な雰囲気をもたらしている。
【Section 4: グローバル・ノマドとレジデンス (Global Nomads & Residency)】
70. 蕨迫みのり (Warabisako Minori)
- 学術的位置づけ:移動する風景 / グローバル・ノマド
- 経歴概要: クルーズ船レジデンスアーティスト / ニューヨーク St. Augustine Church 永久収蔵 / Saatchi Gallery。
- [学術講評]:
- 蕨迫みのりは究極の「ノマド (Nomadism)」の視点を示している。彼女のアトリエは移動するクルーズ船であり、キャンバスに記録されるのは絶えず変化する地平線と文化のスペクトルである。彼女はコーヒーなど非伝統的な素材を用いて創作を行い、この嗅覚と味覚を暗示する絵画は、地域主義の制限を打破し、真の「グローバル化」された視覚体験を提示している。
71. グアリノアキ (Guarino Aki)
- 学術的位置づけ:帰国者の二重視野
- 経歴概要: フランス留学 / 富山県レジデンスアーティスト / 越中アートフェスタ優秀賞。
- [学術講評]:
- フランスの美術教育を受けながら、富山県でのレジデンス創作を選択した。Guarino Aki の作品はある種の「文化混血」の産物である。彼女はヨーロッパ現代アートの語彙を用いて、日本の郷土建築(土蔵や廃校など)の空間記憶を再解釈し、「帰国アーティスト (U-Turn Artist)」独特の二重の視点を示している。
【Chapter V】 連立のスペクトル——多様性の微視的物語 (前編)
The Spectrum of Unite: Diversity & Micro-Narratives (Part A)
[キュレーター・ガイド]
本章では展覧会の中で最も堅実な基層の力を補完する。これにはアカデミー派の技術的骨格、国際交流を推進するネットワークの編み手、そして各地の美術館で活躍する中堅アーティストが含まれる。
【Section 1: アカデミーの骨格と版画思考 (Academic Backbone & Printmaking)】
このセクションのアーティストの多くは東京藝術大学などのトップ学府出身、あるいは版画(Printmaking)の間接的美学に専注している。
72. 塩見章 (Shiomi Akira)
- 学術的位置づけ:版画工房のディレクター / 技術と理論
- 経歴概要: 東京藝術大学油画科 / MMG 版画工房アートディレクター。
- [学術講評]:
- MMG 版画工房のディレクターとして、塩見章は「印痕」に対して深い理解を持っている。彼の作品は単なる版画の複製機能を超え、「版」と「画」の間の弁証法的関係を探求している。その作品スタイルは厳格であり、東京芸大体系の素材技術に対する究極の追求と理論的高さを示している。
73. 田島弘行 (Tajima Hiroyuki)
- 学術的位置づけ:油画と版画の二重奏
- 経歴概要: 東京藝術大学油画科 & 版画研究室 / 版画協会展。
- [学術講評]:
- 田島弘行は油画の直接性と版画の間接性の間を行き来する。東京芸大での二重の訓練により、彼は版画の層(レイヤー)思考を油画に持ち込み、あるいは絵画の筆触を版画に持ち込むことができる。作品は地球堂ギャラリーなどの専門空間でよく見られ、色彩の層と平面構成に対する精確なコントロールを示している。
74. 井上賢一 (Inoue Kenichi)
- 学術的位置づけ:環境と印痕
- 経歴概要: 創形美術学校版画系 / 名栗湖野外美術展。
- [学術講評]:
- 井上賢一が行っているのは「版画の環境介入」実験である。彼は通常室内に展示される版画を名栗湖などの野外の場に持ち出し、人工の印痕がいかにして自然の風、光、水と対話するかを探求し、版画展示の境界に挑戦している。
75. 上杉道子 (Uesugi Michiko)
- 学術的位置づけ:白黒の静謐
- 経歴概要: Shirota Gallery (現代版画の聖地) 個展。
- [学術講評]:
- Shirota Gallery で長年展示していることは、上杉道子の版画界における地位を表している。彼女の作品スタイルは内向的で、腐食や刻印の痕跡を通じて、静謐なモノクロームの世界を提示している。黒と白の微細な調整の中に、極めて高い技術的完成度と精神的深みを示している。
76. 菅野純子 (Sugano Junko)
- 学術的位置づけ:環日本海の視野
- 経歴概要: 武蔵野美術短大 / 春陽展新人賞 / ロシア・ビエンナーレ。
- [学術講評]:
- 春陽展の新人賞受賞者として、菅野純子は春陽会の「在野精神」の伝統を受け継いでいる。彼女は環日本海(富山-ロシア)の芸術交流で活躍しており、作品スタイルは素朴で力強く、地政学の下での文化的つながりと在地の風土に関心を寄せている。
【Section 2: グローバル・ネットワークと韓国の視点 (Global Networks & Korean Perspectives)】
このセクションは AAN (Asian Artists Network) と国際画廊ネットワークを通じて、アジアと世界をつなぐ。
77. 山田陽子 (Yamada Yoko)
- 学術的位置づけ:ネットワークの編み手 / アジアの連結
- 経歴概要: Asian Artists Network (AAN) 社長。
- [学術講評]:
- 山田陽子は本展における「連立」概念の重要な推進者である。AAN社長として、彼女の芸術実践は個人の創作にあるだけでなく、「連結」にある。彼女は日本とアジア各国のアーティストの対話プラットフォームの構築に尽力しており、その作品は往々にして異文化の象徴的記号を帯びており、芸術外交の視覚的体現である。
78. 柳賢淑 (Ryu Hyun-suk)
- 学術的位置づけ:韓仏混血のメインストリーム・エリート
- 経歴概要: 弘益大学 / パリ・グランド・ショミエール芸術アカデミー / サムスン、現代自動車収蔵。
- [学術講評]:
- 柳賢淑の経歴は韓国芸術界のエリートコースを代表している。弘益大学とパリ・グランド・ショミエールの背景は、彼女の作品に韓国の単色画の精神性とヨーロッパ抽象画の構成感を兼ね備えさせている。サムスン、現代自動車などの巨大企業に収蔵されていることは、その作品が商業と学術の両面で成功していることを証明しており、大らかで堅実な国際的スタイルを示している。
79. YUKIKO
- 学術的位置づけ:水彩の現代性
- 経歴概要: 米国 Emerson Umbrella Center / ミラノ M.A.D.S Gallery。
- [学術講評]:
- YUKIKO は伝統的な水彩画を現代アートの領域へと持ち込んだ。米国とミラノでの展示経験により、彼女の水彩作品は小品の枠組みを脱し、油画のような厚みと空間的張力を備えるようになった。彼女は紙の上での水と顔料の偶然の流動を探求し、西洋の文脈における東洋素材の現代的翻訳を示している。
80. Akiko SIACCA
- 学術的位置づけ:市場と創作の二刀流
- 経歴概要: 多摩美術大学 / 銀座画廊社長 / 700回の展示経験。
- [学術講評]:
- 画家であり同時に銀座画廊社長でもある Akiko SIACCA は、独特の二重の視点を持っている。彼女の作品スタイルは通常色彩が鮮やかで、高度な装飾性と市場親和性を備えている。700回という驚異的な展示経歴は、彼女の芸術エコシステムの運営に対する深い理解と溢れる創作エネルギーを示している。
81. HIROMI TOMINAGA
- 学術的位置づけ:大画面の包容感
- 経歴概要: 多摩美術大学 / 銀座の主要画廊。
- [学術講評]:
- HIROMI TOMINAGA の創作は「大画面 (Large-scale)」絵画に専注している。彼女は「カラーフィールド (Color Field)」で観客の身体感覚を包み込もうとしている。その作品は構図において大胆かつ簡潔であり、色彩そのものの感情的な力を強調し、会場において強烈な視覚的存在感を持っている。
【Chapter V】 連立のスペクトル——多様性の微視的物語 (後編)
The Spectrum of Unite: Diversity & Micro-Narratives (Part B)
【Section 3: 立体、空間、そして自然 (Sculpture, Space & Nature)】
このセクションは3D空間の占有と自然素材との対話に関心を寄せる。
82. 藤下覚 (Fujishita Satoru)
- 学術的位置づけ:野外彫刻のボリューム
- 経歴概要: 彫刻の森美術館賞 / 独立美術協会新人賞。
- [学術講評]:
- 「彫刻の森美術館賞」の受賞は極めて高い栄誉であり、通常は大自然と対話できる大型彫刻に与えられる。藤下覚の作品は強烈な構造性と「量塊感 (Volume)」を持っており、彼は材質の重量とバランスを利用することに長けており、空間の中に記念碑的な視覚的焦点を創り出す。
83. 內平俊浩 (Uchihira Toshihiro)
- 学術的位置づけ:彫刻の工芸精神
- 経歴概要: 名古屋芸術大学彫刻科 / KOBATAKE工房 / ハンズ大賞。
- [学術講評]:
- 内平俊浩の作品は彫刻の造形力と工芸の精密度を結合させている。KOBATAKE工房出身という背景は、彼に材質(木、石、あるいは金属)に対する職人のようなこだわりを持たせている。ハンズ大賞の受賞歴は、その作品が独特の創意と手作りの温かみを持っていることを示している。
84. 加茂富美子 (Kamo Fumiko)
- 学術的位置づけ:教育者の造形語彙
- 経歴概要: 武蔵野美術大学彫刻科 / 美術教師。
- [学術講評]:
- 加茂富美子の作品スタイルは堅実であり、形態、体積、空間関係に対するアカデミックな彫刻の厳密な探求を示している。美術教師という背景により、彼女の作品は往々にして啓発的であり、造形を通じて自然や人文への関心を伝えようとしている。
85. 鈴木齊 (Suzuki Hitoshi)
- 学術的位置づけ:大地と生命の循環
- 経歴概要: 東京学芸大学 (陶芸) / 星野道夫に啓発される。
- [学術講評]:
- 生態写真の巨匠・星野道夫の『長い旅の途上で』に啓発され、鈴木齊の作品は「生命の循環」に関心を寄せている。彼は陶芸を媒体とし、作品は土壌の温度と自然の質感に満ちている。彼は芸術を通じて都市の人々に自然環境への畏敬を呼び覚まそうとしており、作品は強い「生態倫理 (Ecological Ethics)」の色を帯びている。
【Section 4: 現代絵画とサロン美学 (Modern Painting & Salon Aesthetics)】
このセクションは具象、半抽象、および日仏サロン文化に深く影響を受けた画家を含む。
86. 青木洲子 (Aoki Kuniko)
- 学術的位置づけ:フレンチサロンの優雅
- 経歴概要: 白尾勇次に師事 / 日仏現代美術展文部科学大臣賞。
- [学術講評]:
- 青木洲子の作品からは純正な「日仏サロン」の気質が漂っている。彼女の色彩運用は極めて凝っており、画面の調和と高雅さを追求している。彼女は過激な変形を追わず、具象描写の中にモダニズムの光と影の層を注入し、日本洋画界による「フランス的趣味」の土着化を示している。
87. 文珠川清 (Monjugawa Kiyoshi)
- 学術的位置づけ:文化外交の視覚形式
- 経歴概要: 日仏現代美術展実行委員長 / 日本大学芸術学部。
- [学術講評]:
- 日仏現代美術展実行委員長として、文珠川清の作品スタイルは大らかで堅実であり、画面の物語性と人文精神を強調している。彼の画作は言語の壁を越え、普遍的な美的価値を伝達することを旨としており、標準的な国際サロン形式の大作である。
88. 淺野あかね (Asano Akane)
- 学術的位置づけ:新ライプツィヒ派の反響
- 経歴概要: 京都造形芸術大学 / ドイツ・ライプツィヒで展示。
- [学術講評]:
- ドイツ・ライプツィヒでの活動経験は、浅野の視覚言語に深く影響を与えた。彼女の絵画は「新ライプツィヒ派 (New Leipzig School)」の特徴——具象的な物語と超現実的な場面の結合——を帯びている。画面は冷静な疎外感を帯びており、グレースケールの中に微かな光が透けて見える様は、京都の技法とヨーロッパの観念の衝突である。
89. 佐々木綱昌 (Sasaki Tsunamasa)
- 学術的位置づけ:装飾性と普遍的美感
- 経歴概要: AJAC 会員 / 損保ジャパン美術賞 / 欧米で受賞。
- [学術講評]:
- 佐々木綱昌の欧米での頻繁な受賞歴は、その作品スタイルが強烈な装飾性と異文化コミュニケーション力を持っていることを示している。彼は色彩の対比と構成を巧みに操り、現代的ながら東洋の底流を持つ視覚的トーテムを創り出している。
90. 尾田芳子 (Oda Yoshiko)
- 学術的位置づけ:半抽象の詩情
- 経歴概要: 武蔵野美術大学修士 / 新象展。
- [学術講評]:
- 尾田芳子は具象と抽象の間でバランスを見つけようとしている。彼女は現実の中の事象を記号化し、識別可能な形体を残しつつ主観的な色彩を与え、ある種の半抽象的な現代の詩情を示している。
91. 穴澤誠 (Anazawa Makoto)
- 学術的位置づけ:構造的リアリズム
- 経歴概要: 二紀展 / 千葉県知事賞。
- [学術講評]:
- 「二紀会」の常連として、穴澤誠は「構造的リアリズム (Structural Realism)」の最低ラインを堅守している。彼の作品は風景や静物を扱う際にも、厳格な幾何学的骨格と厚みのある量感が見て取れ、軽薄な画像の時代に対する視覚的宣言となっている。
92. 伊藤理恵子 (Ito Rieko)
- 学術的位置づけ:自由美術の探求
- 経歴概要: 武蔵野美術学園 / 自由美術展。
- [学術講評]:
- 早期に自由美術展に参加した経験は、伊藤理恵子の型にはまらない創作態度を確立した。彼女の作品は多種の素材実験に及ぶ可能性があり、形式の自由に対する持続的な探求を示している。
【Section 5: 概念、新鋭、そしてクロスオーバー (Conceptual, Emerging & Cross-Over)】
このセクションはコンセプチュアル・アート、音楽とのクロスオーバー、そして画廊界の新鋭勢力を含む。
93. 晶蔵 (Shozo)
- 学術的位置づけ:現象学芸術 / 知覚生成
- 経歴概要: 京都芸術大学修士 / 亀山トリエンナーレ。
- [学術講評]:
- 晶蔵の研究領域は「知覚生成 (Genesis of Perception)」である。これは彼の芸術が単に物体を製造するのではなく、「体験」を製造することを意味する。インスタレーションや映像を通じて、彼は人間がいかに時間と空間を感知するかを探求しており、作品は強い哲学的思弁の色を帯びている。
94. 岡山正規 (Okayama Masaki)
- 学術的位置づけ:構想建築 / 存在論
- 経歴概要: 京都芸術大学 / 梅原猛(哲学者)に師事 / ポーランドの美術館収蔵。
- [学術講評]:
- 哲学者・梅原猛に師事した岡山正規の作品は「視覚化された哲学」である。彼が提唱する「構想建築」という概念は、絵画を思考の枠組みとして捉える。作品がポーランド国立美術館に収蔵されたことは、芸術の本体論を探求する上での学術的価値を証明している。
95. 野村雅美 (Nomura Masami)
- 学術的位置づけ:聴覚の視覚化
- 経歴概要: 即興ギタリスト / 抽象画家。
- [学術講評]:
- 野村雅美の絵画は「目に見える音」である。即興ギタリストとして、彼の筆触は演奏される音符のようであり、スピード感と断裂したリズムに満ちている。彼の画作を見ると、あたかも色彩がキャンバス上で衝突する音が聞こえてくるようである。
96. 梶山美祈 (Kajiyama Miki)
- 学術的位置づけ:記憶と時間のインスタレーション
- 経歴概要: 京都精華大学博士前期 / KUNST ARZT 画廊。
- [学術講評]:
- 京都の実験的画廊 KUNST ARZT で活躍する梶山美祈は、「サイトスペシフィック (Site-specific)」なインスタレーションを得意とする。彼女は空間の記憶と時間の流れに関心を寄せ、作品は往々にして考古学のような詩情を帯びている。
97. 片切かすみ (Katagiri Kasumi)
- 学術的位置づけ:平面デザイン的な現代構成
- 経歴概要: 現代美術家展新人賞 / 美の起原大杉賞。
- [学術講評]:
- 片切かすみは前衛性と商業的潜在力を結合させることに成功している。彼女の作品は強い平面デザイン感を帯びており、ハードエッジな幾何学と鮮やかな色彩を駆使して、リズム感あふれる視覚の迷宮を構築しており、NAUの中でも注目される新鋭である。
98. 関野凛太郎 (Sekino Rintaro)
- 学術的位置づけ:アカデミーエリートの具象の新路
- 経歴概要: 大阪芸術大学博士 / シェル美術賞。
- [学術講評]:
- シェル美術賞と三菱商事 Art Gate Program の支援を受けた関野凛太郎は、典型的なアカデミーのエリートである。彼の作品は具象絵画の中に現代的な疎外感と物質性を注入しており、若い世代による絵画伝統の継承と反逆を示している。
99. かみむらみどり (Kamimura Midori)
- 学術的位置づけ:社会学的視点のイラスト・ナラティブ
- 経歴概要: 金城学院大学社会学 / 3331 千代田芸術祭鴻池朋子賞。
- [学術講評]:
- 社会学のバックグラウンドは彼女に独特の観察視点を与えている。作品スタイルは軽やかで、常にイラスト的な物語性の特徴を帯びており、現代社会における人間関係の疎外や日常の小さな奇跡を探求している。
100. 末本太丸 (Suemoto Taimaru)
- 学術的位置づけ:時間の温度
- 経歴概要: Gallery Hinoki 選抜展。
- [学術講評]:
- 末本太丸の作品は冷厳な現代アートの潮流の中で、温潤な人文的質感を保持している。彼は視覚的な暴力を追わず、観客に幾重にも重なる色彩の中で、時間と記憶の重さを発見するよう誘う。
101. Masaya Iwasaki
- 学術的位置づけ:国際都市の漫遊者
- 経歴概要: 銀座 Modern Art / ニューヨーク The Nippon Club / パリ。
- [学術講評]:
- 彼の出品履歴は典型的な「現代日本人アーティストの海外進出ルート」を示している。作品は高度な普遍性を持ち、スタイル上はモダニズムの抽象または半具象に傾倒しており、異文化間の視覚コミュニケーションに適している。
102. 田村武 (Tamura Takeshi)
- 学術的位置づけ:社会関与型アートの実践
- 経歴概要: 札幌国際芸術祭 (SIAF) 2017 参加者 / 天神山アートスタジオ・レジデンス。
- [学術講評]:
- 田村武の創作の核心は「場 (Site)」と「関係 (Relation)」にある。札幌国際芸術祭の参加者として、彼の芸術実践は往々にして画廊のホワイトキューブを離れ、コミュニティや公共空間へと入っていく。彼は人、環境、芸術行動の相互作用に関心を寄せており、作品は強い社会関与的性質を持っており、NAU展における「社会に介入するアート」の重要な事例である。
103. 杉山まさし (Sugiyama Masashi)
- 学術的位置づけ:原始エネルギーの叫び
- 経歴概要: アフリカ美術館関連作家 / 個展《裂けた大地と牛の叫び》。
- [学術講評]:
- 杉山まさしの作品は「アフリカ美術館」と関連があり、これは現代日本人アーティストの中では極めて稀有である。《裂けた大地》のような創作テーマは、彼が「プリミティヴィズム (Primitivism)」と大地のエネルギーに深く影響を受けていることを示している。筆触は粗野で色彩は重厚であり、現代文明の中に野性的で根源的な生命力を呼び覚まそうとしている。
104. 福江悦子 (Etsuko Fukue)
- 学術的位置づけ:禅と現代の共振
- 経歴概要: 真宗大谷派僧侶 / PESCARART 国際現代芸術賞 (イタリア)。
- [学術講評]:
- 僧侶である福江悦子にとって芸術は即ち「修行」である。彼女は「空」「無常」などの仏教哲学を探求するが、伝統的な仏画形式を用いるのではなく、現代抽象語彙へと転化させている。その作品がイタリアで受賞したことは、宗教の垣根を越えたこの東洋的精神性が、西洋現代アートと深い精神的対話を行えることを証明している。
105. 呉采恩 (Wu, Tsai En)
- 学術的位置づけ:海峡を越えるアカデミーの新鋭
- 経歴概要: 台湾高雄師範大学修士 / 日本第81回現展入選 / 中国美術学院推薦。
- [学術講評]:
- 台湾代表団の中で最も若い新鋭の一人として、呉采恩は台湾のアカデミー美術教育の確かな土台を示している。彼女が日本で歴史ある「現展」に入選したことは、その作品が日本現代アートと対話する実力を備えていることを証明している。彼女の創作は形式上厳格であるが、観念においては開放的であり、日台芸術交流の未来の有望株である。
106. チサカマキ (Chisaka Maki)
- 学術的位置づけ:感性と色彩の編み込み
- 経歴概要: 現代美術家。
- [学術講評]:
- チサカマキの作品は色彩運用において独特の個人的語彙を持っている。彼女は柔らかな、あるいは対比の強い色調を用いて画面を構築する傾向があり、現代生活における個人的感情の微細な波動を探求し、現代美術の中堅層による「絵画性」へのこだわりを示している。
107. 知京一樹 (Chikyo Kazuki)
- 学術的位置づけ:抽象と具象の境界
- 経歴概要: 現代美術家。
- [学術講評]:
- 知京一樹の創作は具象的な記号と抽象的な背景の間を遊走する。彼は画面上に新たな秩序を確立しようと試み、形式の解体と再構築を通じて、観客を超現実的な視覚体験へと導く。
108. 二宮ちとせ (Ninomiya Chitose)
- 学術的位置づけ:視覚語彙の多様性
- 経歴概要: 現代美術グループ展で活躍。
- [学術講評]:
- 二宮ちとせの作品は重要なグループ展のリストに頻繁に登場し、その創作が安定した品質と持続的な展示の活力を持っていることを示している。彼女の作品スタイルは物質の質感と空間構成を探求している可能性があり、日本現代アーティストの素材探索における多元的な側面を忠実に反映している。
109. スズマドカ (Suzumadoka)
- 学術的位置づけ:潜在意識の記号学
- 経歴概要: 現代美術家。
- [学術講評]:
- 展覧会における神秘的な存在として、スズマドカの作品は強烈な記号化された特徴を帯びている可能性がある。線のもつれであれ色彩の平塗りであれ、彼女は潜在意識の深層にある風景を掘り起こそうとしており、展覧会に予測不可能な新鮮な雰囲気をもたらしている。
110. NIL
- 学術的位置づけ:都市の底層の鼓動
- 経歴概要: 渋谷 No.12 画廊、Bar SiSi 築地で活躍。
- [学術講評]:
- NILの活動拠点(渋谷、築地のバーギャラリー)は、その作品が東京の「都市のアンダーグラウンド (Urban Underground)」文化に深く根ざしていることを示している。その創作はグラフィティ、コラージュ、あるいは既製品の流用を含んでいる可能性があり、都市のジャングルにおける若い世代の生存状態と視覚体験を直接反映しており、強烈なストリートの気配を帯びている。
【Chapter VI】 総集編——全スペクトルの最後のピース (The Final Spectrum)
111. 石井三子 (Ishii Mitsuko)
- 学術的位置づけ:芸術一家の生活美学
- 経歴概要: 彫刻家・石井鶴三の娘 / 生活デザイン研究。
- [学術講評]:
- 著名な芸術一家の出身である石井三子の創作は、純粋芸術と生活デザインの垣根を越えている。彼女は家族の深い美的素養を受け継ぎ、芸術を生活の一部と見なし、作品には優雅で洗練された古典的気質が流れると同時に、現代デザインの実用的理性も兼ね備えている。
112. 飯田稔 (Iida Minoru)
- 学術的位置づけ:舞台美術の空間ナラティブ
- 経歴概要: 東京藝術大学 / 伊藤熹朔賞(舞台美術の巨匠賞)。
- [学術講評]:
- 飯田稔の絵画は強烈な「劇場感」を持っている。舞台美術界の最高栄誉「伊藤熹朔賞」という背景は、彼にキャンバス空間を舞台のように演出させる。彼の作品は壮大な物語性と劇的な光と影を持ち、観客を入念に配置された視覚的物語へと導く。
113. 高橋詩桜里 (Takahashi Shiori)
- 学術的位置づけ:学術研究と創作の結合
- 経歴概要: 九州産業大学博士前期。
- [学術講評]:
- 若い学者型アーティストとして、高橋詩桜里は九州学派の次世代の力を代表している。AAN (Asian Artists Network) での活躍は、彼女が国際的視野を備えていることを示している。その作品は往々にして現代アートの理論的問題を探求しており、学術研究と感性による創作のバランスを示している。
114. 中島優理 (Nakajima Yuri)
- 学術的位置づけ:ファッションと線の交響
- 経歴概要: 文化服装学院 / 上野の森美術館出品。
- [学術講評]:
- 日本のファッション最高学府出身である中島優理の作品は、強い「テキスタイル感 (Texturality)」を帯びている。彼女は布のドレープ、裁断、人体構造に独自の理解を持っており、その絵画は往々にしてファッションイラストのような流暢な線を醸し出し、ファッションデザインの美学を純粋芸術の表現へと転化させている。
115. 林和子 (Hayashi Kazuko)
- 学術的位置づけ:光学的マンダラ
- 経歴概要: 万華鏡の巨匠・山見浩司に師事 / 光学芸術。
- [学術講評]:
- 林和子は「万華鏡 (Kaleidoscope)」の光学原理を平面創作に持ち込んだ。彼女は鏡像の屈折と対称幾何学を利用し、絢爛で幻惑的なマンダラのトーテムを創り出す。これは精密な計算に基づく視覚的魔術であり、幾何学構造における光と色彩の無限の可能性を探求している。
116. 福田瑞枝 (Fukuda Mizue)
- 学術的位置づけ:怪談文学の視覚化
- 経歴概要: 『日本不思議物語集成』挿絵 / 現代思潮社。
- [学術講評]:
- 福田瑞枝の作品は強烈な「文学性」を持っている。彼女は怪談文学の挿絵創作に参加しており、幽暗で神秘的、かつ物語的張力のある雰囲気を醸成することに長けている。彼女の画作は異世界への窓のようであり、人間の心理の深層にある未知への恐怖と好奇心を探求している。
117. 松村清司 (Matsumura Kiyoshi)
- 学術的位置づけ:自然と人工の弁証法
- 経歴概要: 現代美術家 / インスタレーションと絵画。
- [学術講評]:
- 松村清司は精密な描写の中で「自然と人工」の境界を探求する。彼の作品は絵画とインスタレーションを結合させ、冷静な観察視点を提示し、混乱した都市景観と有機的な自然形態の間に、視覚的秩序とバランスを見つけようとしている。
118. 松下佐代 (Matsushita Sayo)
- 学術的位置づけ:国際アートフェアの寵児
- 経歴概要: チューリッヒ Art International / ニューヨーク Pangea 展。
- [学術講評]:
- チューリッヒ、ニューヨークなどの国際アートフェアに頻繁に参加している松下佐代の作品は、強い「市場志向」と国際性を持っている。彼女のスタイルは色彩が鮮やかで装飾性が強く、文化の隔たりを越えて直接視覚的快楽に訴えかける普遍的な美感という、日本現代アートの一面を示している。
119. 山内孝一 (Yamauchi Koichi)
- 学術的位置づけ:信州の風土の記録者
- 経歴概要: 和光大学 / 長野県の主要美術館で展示。
- [学術講評]:
- 山内孝一は長野県(信州)で活躍しており、その創作は現地の高山と峡谷に深く根ざしている。都市のアーティストの冷淡さとは異なり、彼の作品はある種の「風土 (Fudo)」の厚みを帯びている。飯田市美術博物館などでの活動は、日本の地方美術館体系における深厚な人文的基盤を示している。
120. やちぐちひろゆき (Yachiguchi Hiroyuki)
- 学術的位置づけ:東京画廊生態の断面
- 経歴概要: 国立新美術館 / GALERIE SOL。
- [学術講評]:
- Yachiguchi は東京の銀座・京橋一帯の近現代画廊における活動家である。彼の出品履歴は、彼が東京画廊エコシステムの中堅戦力であることを示している。その作品は大規模な展示空間を御する能力を備えており、色彩が鮮やか、あるいは強烈な視覚的記号を備えた現代絵画に傾倒している。
【III. 特別企画:アジアの戦略的結節点 (Special Feature: The Asian Nexus)】
王穆提 (WANG MUTI)
- 学術的位置づけ:アジア現代アートの戦略家 / アーキビスト (The Strategist & Archivist)
- 経歴概要: 日本現代美術家協会(現展)台湾連絡所所長 / NAU台湾初のメンバー / キュレーター。
- [学術講評]:アーティストとして、彼の作品は日本の「現展 (GENZAN)」で受賞した脈絡を受け継ぎ、空間と材質に対する高度な鋭敏さを示している。彼は個人の記憶と歴史的アーカイブを「コード化」し「再構築」することに長けており、その作品は往々にして冷静な秩序感を帯び、混乱した情報爆発の時代において視覚的インデックスを確立しようとしている。
- しかし、彼のより重要な貢献は「連結」にある。台湾と日本の芸術エコシステムの重要な結節点(Nexus)として、彼は2,000名を超えるアーティストの独立したデジタルデータベース構築を支援しました、高規格な日台交流展を数多く企画してきた。彼の創作それ自体が「関係性の美学 (Relational Aesthetics)」の実践である。王穆提の存在は、現代アーティストが単なる作品の生産者ではなく、芸術生態系の編み手であることを証明している。
- 本展における王穆提の役割は二重である。彼は創作者であると同時に、マクロな視野を持つ「戦略家 (Strategist)」でもある。









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